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デスクトップCNC「Carvey」での三次元切削についての備忘録

Carveyについて

アメリカの材料販売会社が開発したデスクトップCNCが「Carvey」で、それまでにオープンソース系のCNCキットを発売していたので、そのノウハウをつぎ込んだのがこの機械だったんだと思う。クラウドファンディングで募集していた時点で申込み、昨年2016年の3月頃に手元に届いた。フルカバータイプなので、切削粉が飛び散らないのがよい。静かというのがひとつのウリみたいだったけど、プラスチックの粗取りしてる時は結構ブーンブーンうるさい。まぁ、それは切削振動の音なので、送り動作や仕上げ工程の時はたしかに横で電話できるくらい。購入の決め手だったのが、クラウドのCAMが無料提供されていた点。購入当初は切削時間の予測なんてのはなかったし、G-codeのインポートもできなかった。けど、期待していた通り数ヶ月ごとにアップデートが続いており、2step加工が追加されたり、待望のG-codeインポートがついたりで、もう十分な機能になってきた。そこにFusion360 CAM用のEaselポストセッティングが用意されたので3次元加工も低コストで実現した。そんなわけで、Carveyを使っての3次元切削の作業の備忘録を残しておく。

※ 間違ってるかもしんないよ。

データの準備

まずモデルデータを用意する。Fusion360で描いてもいいし、僕はライノセラスの方が軽快に動くのでそっちで作っちゃう。Fusion360でモデルデータをインポートしたら、モデルの方向を合わせておく。あとでCAMでストックセッティングする時に、作業空間のxyz方向に合わせてストックが出るので、その向きに合うようにモデルを回転させておくとよいと思う。

・モデルのインポート

・モデル選択→移動

モデルが読めたら、Fusion360のモードを「CAM」にする。

はじめて使う場合はEaselのダウンロード画面から「Easel post for Fusion360(的な名前)」をとってきて、Fusion360のマイプロファイルの設定を開いて、クラウドフォルダの「My post」にEaselから取ってきたポストファイルをアップしておく。これは一度やれば基本的にOKだけど、何度かEaselポストデータが更新された過去があるので、新しいポストが出たらそれに変えるのがいいと思う。

CAMモードで最初にするのは「新しいセットアップ」でストック(材料)の設定をすること。この時、Carveyは材料の左手前上の角を原点にしておくとよい。ちなみに、Fusion360のモデル空間上の座標は関係ない。セットアップの時に決めた原点が加工の原点になる。

ところで、Carveyにはスマートクランプなるものが付いているため、左手前の角は加工不可領域になっている。モデルで切削したい箇所が左手前にある場合は小細工が必要になる。その方法はなんてことはなくて、捨て板を用いてスマートクランプから十分離した位置に実際に加工する材料を固定し、その離した距離を足したものをCAM上ではストック設定としておけばよい。(例、x100 y60 z20の板を全面加工する場合、捨て板の原点からx40 y40離したところに材料を固定し、CAM上ではストックサイズをx140 y100 z20としておく。捨て板の分はストックサイズに入れなくていい)この時、スマートクランプを掛ける部分にも実際に加工するいたと同じ厚みの板をはさんでおくこと。どうもCarveyはスマートクランプで刃物補正かける際にステージからの絶対高さで計算しているようなのだ。なので、高さを合わせていないと、刃物がツッコんじゃう可能性がある。(CAMのストック設定で材料の高さを倍にしておけばいいのかもしれないけど、 厚みがある場合Easel側で“厚すぎる”というエラーを出すかもしれない)

新しいセットアップで必ずしておくこと

・ワーク座標系はストックの左手前上に設定

・スマートクランプから逃がす小細工する場合はストックサイズを変更

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セットアップが終わったら、次は加工種を選択する。Easelでできないことをやるんだったらもちろん「3D」モードの中から選ぶ。大まかには荒取り系の「負荷制御」「ポケット除去」と仕上げ系の「等高線」等が用意されている。最初に設定するのはもちろん荒取り系から。Carveyは切削力があんまり高くないので基本的には「ポケット除去」を選んでおけば間違いない。スタイロフォームみたいなザクザク削っていけるやつの時は「負荷制御」が効率的なパスになる。

さて加工種を選んだら(まずはポケット除去)ウィンドウが出てくるのだけど、最初にやるのが刃物選択。「工具タブ」の中の一番上が工具選択で、そこを押す。すると刃の一覧が出てくる。Carveyはインチ系なので、inchのタイプから刃を選ぶ。一覧は加工する材料ごとにリストがまとまっているので、プラスチックを加工する時はプラスチックのリスト内の刃を選ぶとあとで加工条件を大きく直さなくてよくなる。ただ、inventablesで出してる刃にドンピシャの設定は無いので、慣れてきたら自分でツール登録しておくのがいいと思う。ツール登録していれば工具選択画面でそれを選べばいい。この工具選択のところで工具を選んで右クリックから編集メニューを開くと加工条件を変更して覚えさせておくこともできる。

工具を選んだら、念のため各スピード条件をみておく。1/8インチ刃径で材料が汎用プラスチックなら切削送りは700mm/min以下、切込み(z方向)は250〜300mm/minあたりが安心だと思う。

工具選択の次は「図形タブ」で加工範囲を指定する。穴加工する場合とかは範囲指定で穴のエッジを選ぶ(選んだ境界が黄緑色になるはず)。

その次は高さ設定。基本的にデフォルトでもいけるのだけど、貫通加工(ようは材料の底まで削る穴加工みたいなやつ)する場合はボトムの値を-0.5mm程度オフセットかけておくのがよいと思う。実際の材料の厚みにムラがある場合は、このボトムオフセットを強めにかけておけばしっかり底まで刃がとどくはず。

そして「パス」のタブへ移動し、そこのピッチ設定を調整する。ピッチが粗いと加工は早くなるけど、刃への抵抗が強くなるのでStepモーターのCarveyでは脱調の原因になりかねないから小さくしておくほうがいいだろう。刃にもよるが0.5mmくらいの切込みピッチがいいだろう(ステップオーバーはデフォルトでいいと思う)。

「リンク」タブは特に触らずでOK。

ここまでで、加工種設定を完了させるとツールパスの計算が勝手に始まる。狙った通りならそれで次に進む。

粗取りの次に仕上げ工程を入れるならもう一度加工種設定をする。加工種によって設定項目が変わるのだけど、手順はポケット除去と近いだろう。

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ツールパスが取れたら、書き出したい加工種を全て選んで(忘れやすい部分、ひとつしか選んでない状態とかよくある)、「ポスト処理」を実行する。ポスト処理のウィンドウが開くと、ポストの選択画面になる。初めての場合は適当なポストになっているのだけど、ここは「マイクラウドポスト」からEaselのポストを選ぶ。ポストを選んだらOK押すと、保存場所とファイル名入力が出るので、適当な名前を付けて保存する。拡張子は「.nc」だ。

ここまでがデータの準備

G-codeデータをEaselに読む

Easelで新規プロジェクトを立ち上げる。CarveyとはUSBで接続しておき、Easelの機械選択でCarveyにしておく。まずは材料サイズ設定をEaselのプレビューウィンドウの脇のところでしておく。スマートクランプから離す小細工している場合はFusionで設定したストックのサイズにしておく。捨て板がある場合は捨て板の厚みを含めた総厚にする。

材料サイズが設定できたら「インポート」メニューの「G-code」を選ぶ。ファイル選択で、Fusionから書き出したファイルを選ぶ。すると問題なければプレビューが表示される。材料のサイズがプレビュー上は狂ってるかもしれないけど、それは無視しておく。パスが狙った通りの位置にあるようなら、あとは「Carve」するだけ。

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最初の方は変な位置に行かないか、Carveyの一時停止ボタンに手を当てて見守ろう。想定通り加工が始まったら成功だ。

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ただのストレートビットでもかなり曲面が出る。これで切込みピッチ0.1mm。